舞台「野良女」公式サイト

レポート

  • 2017.03.26アラサー独身女は生きてるだけでエライ。えぐられハッピー系舞台『野良女』プレビュー


    「三十代の女なんてさ、生きてるだけでえらいんだよ。だって死にたくなるようなことをいろいろかわしてここまできてるんだから」(『野良女』より)


    左から、深谷美歩(壺井役)、菊地美香(横山役)、佐津川愛美(鑓水役)、芹那(桶川役)、沢井美優(朝日役)

    ■アラサー女子の「ヤバイ」「どうしよう」だらけの舞台


    アラサー女にとって「結婚したい」「幸せになりたい」は魔法の呪文だ。27歳までには結婚できると思っていたのに絶賛セフレ沼にいたり、年収が上がらず予想より貯蓄できていなかったり、疲れが昔みたいにすぐ回復しなくなったり、「男がいないと女は幸せになれないよ」とかいらんアドバイスをもらったり、そんなせちがらーいことがあると、空のワインボトルを並べてストーンサークルを作りながら「会社を辞めたい」「ハワイに行きたい」「石油王になりたい」と同じテンションで「あー結婚したい」「だよねー」って言う。

    2016年に人気を博したドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の作者、宮木あや子の同名小説を舞台化した『野良女』は、そんな「つらいわー」「やばいわー」「結婚したいわー」「幸せになりたいわー」とアラサー独身女5人たちが語りまくる「女子会劇」だ。

    数年単位で彼氏がいない。セックスしてなさすぎてヤバイ。恋人はいるけれど、相手が妖怪男(DV男、生活能力のない夢追いイケメン、ロマンティック不倫おじさん)でヤバイ。婚活したけど相手を好きになれなくてヤバイ。

    さらには、派遣だから仕事が不安定、正社員だけど激務すぎ、体力がなくて前みたいに無理できない、婦人科の病気……など、女子会をやっている女子たちなら「はいはいはいはい」と全自動赤べこのように高速でうなずくであろう悩みの数々を、「まずい」と評判の居酒屋でわいわいしゃべり倒す。

    もともとドラマ化の話があったけれど放送禁止用語が多すぎて舞台化になったというぐらい、彼女たちの話は赤裸々で、下品で、生々しい。「女子会って皆でカクテルを飲みながらマカロンとか食べてるイメージ」とのたまう男と会ったことがあるが、彼がこの会話を隣で聞いていたら卒倒するだろうなーと思う。

    ■恋愛や仕事に悩みがある女子にこそ勧める2つの理由



    公開稽古の様子。泡盛片手にガールズトーク。

    野良女たちは「すごく楽しそうだけど不安そう」だ。しゃべることはたくさんあるし大笑いするけれど、「こうすればうまくいく」という方法を誰も知らない。お互いに他人のことはよく見えるけれど、自分がうまくいってないから自信がない。『野良女』の舞台は、ここらへんのアップダウンする心理を的確にえぐり出してくる。

    ここで今絶賛お悩み中のアラサー女子ならこう思うかもしれない。

    「現実でもさんざん似たような話をしてるし、今ばっちり不安なんだから、わざわざ舞台を見てまで追体験をしなくてもいいのでは?ただでさえ少ないライフポイントがさらに削られるのでは?家でひとり体育座りをして泣く羽目になるのでは?」

    しかし、本作はあえて「恋愛や仕事や結婚に悩みがあって、不安で将来が見えていない」人にこそ見てほしい。理由は2つ。

    まず、野良女たちがダメダメで共感できるけど、たくましいから。彼女たちは外見はキラキラしてるけれど、中身は私達と同じでぐずぐずのダメダメだ。別れようと思っても別れられないとか、結婚向きの男よりトキメク男を選んじゃうとか、いわゆる「正しそうに見える道」を選べない。でも、最後には自分で自分の道を選択する。「女の幸せはこうあるべき」パーソンが見たらすぐにダメ出しをしてくるような道でも、彼女たちは悩んで転んでうだうだしながらも、自分でちゃんと選ぶ。その姿が見ていてとても気持ちがいい。

    もう1つの理由は、笑えるから。彼女たちの悩みは軽くないし、婦人科の病気などのヘビーな話もあるけれど、ダウナーにならない。演出のブラックユーモアぶりもなかなかで、巨根がやたら出てくるし、男性が1人5役だし、どちらも登場のしかたが予想外のシュールさだし、舞台ならではの演出を笑って楽しめる。


    唯一の男性キャスト、池田倫太朗

    ■「自分で自分の道を選ぶ」はアラサー女子の必須スキル


    「自分で自分の道を選ぶ」って、アラサー女子の必須スキルにすればいいんじゃないかと、個人的には思っている。

    オンライン・オフラインで恋愛相談を多く受けてきてつくづく思うのは、世間体や親のプレッシャーといった外圧や、「よくわからないけど皆やってるからやらないとダメ」という思い込みで「結婚しないとやばい」「恋人を作らなきゃ」と焦り、ストレスを貯めて病んでいく女性があまりにも多すぎること。そのうちの何割かは、外圧ベースや思い込みではなく「私はこうしたいんだ」と自分で考えて決断して行動するようになるのだけど、彼女たちは皆、こちらがびっくりするぐらい明るくなり、自信を持って自分の人生を生きるようになる。

    だから『野良女』は、不安だけどどうしたらいいかわからなくて途方に暮れていて「最近あんまり笑えてないなー」という女性にこそ見てほしい。1週間に1回以上「結婚したい」「幸せになりたい」とつぶやいたことがあるアラサー女子なら、未婚でも既婚でもオッケー。

    おすすめは、一緒に悩んでいる女友達と観劇して、その後においしいごはんとお酒をめいっぱい楽しみながらそのまま女子会すること。アラサー女は生きてるだけでえらいのだから、気の置けない女友達と「うちら、えらいわー」「最高だわー」と言い合えるまでが本編である。



    ライター情報

    ぱぷりこ

    ブログ『妖怪男ウォッチ』を書く、アラサーOL。恋愛魔窟で出会った妖怪男女をブログで供養している。特技は悪霊退散、方違え、お焚き上げ。

    ブログ『妖怪男ウォッチ』:http://papuriko.hatenablog.com/
    Twitter:@papupapuriko





    【舞台「野良女」チケット情報】

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